六月二十五日 おまけ〜京都幻想滞在記〜 その5

吉田寮、それは間も無く築百年を迎えようとしている趣のある、 と言うか趣ありまくりの二階建ての京大生専用の寮である。 そこでは京大生たちが日夜ワイワイ酒を飲み、歌いに踊り喚き散らして生活していると言うではないか。 ちなみに部外者も宿泊出来るらしく、なんと一日の宿泊費は二百円と破格であることから行動の拠点にと バックパッカーたちの間では有名だそうである。

「是非、連れて行って下さい!」

と、お土産に文学的アルコール飲料である『ジョニ黒』を購入し、私は吉田寮へ赴いたのである。

もうすぐ築百年を迎える今にも倒壊しそうな出で立ちはさながら幽霊屋敷のようで、 明りさえなければ最早廃墟同然であった。

「一緒に飲みたい?」

吉田寮ではまだ日も暮れていないというのにすでに飲み始めている学生で溢れていた。勉強せい。

「是非ご一緒させて下さい」

当初吉田寮の学生たちは私を怪しんだが、私の手にある酒を見るなり歓喜の声を上げ、 迎え入れてくれたのである。なんともはや、酒の力恐るべし。 そうなれば最早無礼講というもので、夜中まで呑みに飲み、挙げ句、

「よし、プール開きだ!!」

と夜中の京大に忍び込み、プールで水遊びに興じる始末であった。



酔った勢いで私は自らが自衛官であることをすっかり失念していた。 よって、近所の方の苦情でやってきた警察を見た時は一気に青ざめた。 血の気とともに運気とか、バラ色の未来とか、色々と去って行った。そして私は社会的死を覚悟した。 が、その時私を迎え入れてくれた京大生グループ 『腹太鼓以下有形無形の方々』が私を逃がしてくれた為、正に九死に一生を得たのである。

その後、下着一枚のみを纏い、京都の住宅街を走り回り、命からがら吉田寮に逃げ帰った私は 吉田寮の大部屋にある『この上なく傾く二段ベッド』で生まれたての子猫のように震えて眠ったのであった。




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