四月一日 大津駐屯地着隊 その4
自己紹介して暇を潰す我らに一人の小柄な男性が近づいてきた。 あまりに小柄な為映画の世界からホビットが出てきたのではないかと思ってしまったのは無理からぬ話だ。
「よし、全員揃ったな!」
そう、このミスターホビット、彼こそが我ら十一名を束ねる営内班長、石山三曹である。 彼は高等工科学校出身のエリート陸曹であり、その決して大きいとは言えない身体の内に 琵琶湖並みの大きなハートを携える熱血漢であった。
何はともあれこの三ヶ月、彼らと共に訓練に励み、汗と涙を飲み、喜びを分かち合うのだ。 はたと気が付けばもう卒業、あれだけ我慢していた筈の涙が決壊したダムのように…… なんと短い、儚い、そしてかけがえのない時間なのだろうか?私はセンチメンタルな奴だった。 あまりにセンチメンタルだった為、着隊した当日に修了と別れを思い、ついつい涙を流してしまった。
「みんな……ありがとう!!」
「……お、おい、流石に泣くのは早すぎだろう……」
班長は本気で私を心配していた。と言うよりかは私に引いていたんだと思う。