四月八日 妖怪・陰毛散らし

ラッパ恐怖症とは無論自衛隊員のみが発症する水虫に並ぶ自衛隊病の一つであり、 多くの隊員たちは自衛隊に在籍している限りこれら多くの難題に悩まされ続け、 例え一線を退いたとしても大きな後遺症が残るとされていた。そして、その他にも自衛隊特有の不思議や謎が存在する。

その中で最も存在感を放つものは『妖怪・陰毛散らし』である。

諸君らはこの謎に満ちた妖怪をご存知であろうか?やつらは駐屯地の居住区域、 つまり営内にて『理性の欠落した隊員』のベッドの下に住まうとされているが、その姿を直に見たものは限り無く少ない。 自衛隊の上層部、極僅かな幕僚幹部のみが出入りすることの出来る古文書簡にだけその姿を記した文献が存在する と言われているが真意の程は確かではないし、それを私に自慢げに教えてくれた新隊員も謎の失踪を遂げた。

さて、話しは大きくそれだがこの陰毛散らしがなんと我が第一営内班にも現れたのである。

「おのれ!陰毛散らしめ……!!」

阿部氏が早朝清掃にて箒を構えて臨戦体勢をとっていた。 しかし奮闘の甲斐も虚しく来る日も来る日も抜け毛は決まって後藤のベッド下に現れた。

「後藤、何か……言いたいことはあるか?」

きれい好きであった玉川さんを筆頭に班員たちは後藤に迫った。

「むしゃくしゃしてやったんだろ?」

「正直に白状しろ!」

「人は誰しも過ちを犯しますが、次が大事なんですよ、後藤二士」

「誰も君一人を責めたりせんから」

「何とか言ったらどうなんだ?」

「全く反省の色が見られませんね、」

「反省もしてないし後悔もしてないってか?」

「……こういうのはさ、誰かが悪いんじゃなくて社会が悪いんだよ」

班員総出の追及にとうとう後藤は口を開いた。

「しっ!静かに!……容疑者が供述を始めるぞ!!」

「……か、勝手なことばっか言いやがってーッ!!!」

尚陰毛散らしは彼が大津駐屯地に滞在した三ヶ月間彼のベッド下に滞在し続け、陰毛を散らしまくったのである。




もくじへ移動/ 次のページへ

TOPに戻る