四月十一日 基本教錬

教育開始当初は基本教練と呼ばれる自衛隊を辞めない限り切っても切れず着いて回る曲者を学ぶことになった。 内容は多く、どれも難しい。基本教練に関しては主に部隊での行進や式典等にて見受けることが出来るが、 教育中は食堂に行くにも風呂に行くにもこれで行進せねばならず、 想像出来ないかもしれないだろうが凄く面倒で厄介至極という言葉は正にこの為にあると断言してもいい。 このような訓練ばかりしていては休暇で実家に帰る時も基本教錬で帰らなければならない、 なんてことになってしまうこともあるかもしれない。

「気を付けッ!!」

※不動の姿勢を取る。不動の姿勢とは端正にして気力が充実し、 いかなる号令に対しても直ちに応じられるものでなければならない云々)


「左向け〜……左ッ!!」

(※第一挙動でかかとと左つま先を僅かに上げ、左足の親指の付け根のふくらみに力を加え云々)」


「回れ〜……右ッ!!」

(※云々)」


「……あ」

うっかりしていて号令を聞き逃し右なのに左を向いてしまった。つまり同期たちと向かい合うようになる。 しばしの沈黙の後に来る限りない焦燥感と羞恥心はとてもではないが形容し難い。 私は慌てて皆と同じ方向に向き直るのであった。




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