四月十三日 武器分解結合訓練

教育が始まり三日目にして不安要素の一つだった小銃の分解結合を行った。


「おい佐原ッ!!!部品は落とすな言うたやろ!!!」


配られたペラペラの紙に分解された状態の小銃の部品名と並べ方が記載されており、 その総計の部品数は五十を超える数となった。これは実際に分解結合を行った人にしか言っても分からない話であろうが、 小銃の『スライド(※ライフルの射撃時に次弾を装填する為後退する)』部分は時として 『ピストン捍止め用ばねピン抜きトントン』に名前を変えるのだ。


「戦場なら死ぬぞッ!!!佐原ぁッ!!解っとんのか!!あぁ!!?」


混乱するのも無理はない。これは小銃の分解工程で銃身本体に挟まっている『ピストン捍止め用ばねピン』をたたき出す為に、 スライドを使用することに由来している。


「ちょ、おま……佐原、お前部品落とし過ぎやろ注意せんかッ!!」


尚、分解結合は小さな机の上に雑毛布を敷いて実施されるが、 たとえ事故であっても地面が裂けても、第三次世界大戦が勃発したとしても、 はたまた某北の国が核ミサイルをぶっぱなしてきても 小銃の部品を床に落としてしまった者には厳しい罵声と腕立てが待っているのである。


「こらぁッ!!佐原ぁッ!!!お前何回部品落とせば気が済むんやッ!!?」


佐原氏はしょっちゅう部品をありえない方向に吹き飛ばしていて、私は連番で彼の隣であった為、 彼を罵倒する声が自分のものなのではないかと度々肝を冷やした。




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