四月十四日 山本班長と指導 その2

ちなみに私たちは現在腕立て伏せをしている。

諸君らならば腕立て伏せ五十回はそこまでキツくもなくこなすことが出来るだろう。

だが、我らの腕立て伏せはこれでもかと言うほど姿勢に拘り、一人でも形が悪いと回数は数え直され、 楽な姿勢をとろうと腰を上げようものならば班長助教たちに蹴り飛ばされる。

何故こんなことになったかと言えば我らが予定された時間に遅れたからである。

一見我らに否があると思ってしまうことだろうが実際悪いのはその杜撰なスケジュールにある。 訓練の為十二時半に遅れて稼業を終えて昼食に向かおうとする我らに山本班長は十二時五十分には昼食を終えて 完全に集合した状態を作れと言い放つ。

何をどう冷静に考えても無理だ。

まず、食堂に到着するのが三十五分、直ぐに食べ始めて四十五分に喫食完了。 なんだ帰って来て五十分、全然間に合うではないか?いやいやそんなことはない。 食堂に入る為に一旦外した弾帯(ベルト)やサスペンダー等の装具を居室まで戻って着け直し、 さらには居室から武器庫にまで向かい、小銃を掌握して隊舎の裏に集合しなければならないのだ。

どう考えても無理だ。

自衛隊の教育機関連中は何を考えているのか?脳足りんばかりか!?責任者を出せ。

ともかく山本班長は来る夏の浜辺に照準を合わせ、我らにこれでもかと言うほど筋力トレーニングを強要した。

「これで……今年の夏は……私のものだ!」

筋肉痛で張った身体をゆっくりとベッドの上に載せて私は就寝を迎えるのであった。 尚ラッパ恐怖症に関しては体力的に厳しくなってからはめっきり発症しなくなった。




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