四月三十日 行軍と乾パン
新隊員教育隊における一大イベント、それが行軍である。3か月の教育中に二回あり、一回目が10キロ、 二回目が25キロを歩くという訓練である。ちなみにただ歩く訳ではない。 野営に必要な着替え、食糧、携帯雨具、携帯えんぴ(スコップ)、それを入れる背のう、 そして小銃をかついで歩かなければならない。さらに腰には弾帯(ベルト)につけられた水筒、 弾のうと弾装、それらの重みがジワジワと体力を奪うのだ。そんなつらい訓練ではあったが、 私は一つ楽しみにしていたことがあった。乾パンだ。乾パンが食べたい。 行軍に乾パンはセット、乾パンなくして行軍は語れない。その一心で最初の10キロ行軍を歩きぬいたのだ。
「おーい、昼飯だ!!」
班長達が叫び、いよいよ乾パンが配られると思った矢先。
「……何……だと……ッ!!?」
私が目にしたのは前から順に渡されてくる大小さまざまな缶詰であった。 尚現在では乾パンの支給は少ないらしくほとんどが缶詰、缶飯だそうだ。
「おい、班長ッ!!よくも騙してくれたな……ッ!!?(※班長とは仲良くして下さい)」
「うるせー、お前缶飯食えるだけありがたいと思えよ!!!乾パンなんてパサパサで喰いづらいんだよッ!!!」
これはまぎれもない裏切り、ブルータスお前もか!?結局乾パンは食べれず、宿営では大雨の散々な行軍であった。