五月一日 区隊長とWAC

WACとは軍隊用語で、Woman Army Company の略で婦人自衛官を意味している。

「奴らが女性な訳ないやろ、教本にも書いとったやろ、『姿かたちは人間の女性に似通ってはいるが 、中身は別もの悪鬼羅刹』、ってな(※書いていません)」

ドクターストップがかかっても筋肉トレーニングを止めない『歩く筋肉』として新隊員はおろか 教員助教たちからも恐れられていた三区隊長の黒磯曹長であったが、そんな区隊長でもWACを恐れていた。 WACの新隊員教育隊もこの大津駐屯地に存在し、隊舎は違えど共に高みを目指す同期だと思っていた。 が、これはどうしたことか?向かいの隊舎に住まうは生物兵器か?向こうは伏魔殿か? 区隊長は訓練の合間に我々に言って聞かせた。

「ワシはよく良い面構えの男性自衛官が、それほど可愛くもない女性自衛官と結婚するのを良く見るんよ。 あれはきっと長いこと駐屯地に引きこもっているせいで視力がおかしくなっているとしか思えんのや…… 教本に書いとるやろ、『常に徳操と視力を養ってWACの偽装を見破るべし』、ってな(※書いてません)」

区隊長は何かを悟ったように結言を述べた。

「お前らも得操ちゃんと養っておけよ?服務の宣誓にあるやろ?」

自衛官の妻に尻に敷かれている男性自衛官の姿が簡単に想像出来た。




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