五月十三日 スリザリン三曹と外出 その1

スリザリン三曹と私にまつわる物語をここに語ろうと思う。

先に述べてしまったが彼は新隊員たちからの評価は非常に悪かった。 かく言う私も彼があまり好きではなかったし部隊も違ったので大して接点はなかった。 これはスリザリン三曹と私の語ることの出来る数少ないエピソードのうちのひとつである。

就寝後、それはつまり隊員すべてが休息を取らなければならない時間を意味し、便所に行く以外は、 ベットを出ることを許されない。無論携帯を弄ることもジョニーを弄ることも禁じられている。 だが、その夜またまた偶然私のポケットには携帯が忍び込んでいた。全く躾のなっていない携帯である。 くどいようだが、携帯が入っていたのは本当に『たまたま』の出来事であり、 そのたまたまは何日か連続することも少なくなかった。

禁じられた夜に態々危険を侵してまで私のポケットに入って来たのにはただならぬ理由があるからだと悟り、 仕方がなく私は携帯を弄ってやることにした。どうせなら、ベットに女性が忍び込むという展開を強く 希望したいところだが、万一、隣の隊舎のWACが入ってくるようなことがあれば、 起床と同時に干物か何かになった私が、同期によって発見されることであろう。

潜んで携帯を弄ること半刻、ロッカーをガチャガチャと弄る音が居室に響いた。

「何をやっている?さっさと寝たまえ」

一応携帯を隠してロッカーを弄くる影に注意を促す。大方何かを仕舞い忘れ、焦っているのだろうと思われた。 だが暗くて相手方の顔が見えなかったことが最悪の事態を招いた。 班員だと思っていた人物はなんとスリザリン三曹だったのだ!!スリザリン三曹はゆっくりと此方に歩を進め近づいて来た。 その一挙手一投足はさながら獲物に這い寄るへ蛇のようで、ギラリと怪しく光る瞳に見据えられ、 私は蛙の如く縮こまる。私は心の中で

「おおジーザス、万事休すである。我を助けたまえ、アーメン!」

としきりに叫んだ。ちなみに私がキリスト教徒になるのはクリスマスのその日だけなので今は皐月 勿論ジーザスは助けてくれないだろうと思われた。 私は当初血祭りに上げられ最悪大して連絡する相手の居ない携帯を取り上げられ、 『研究所(※不出来な隊員を更生する施設)』送りにされると思っていた。しかしスリザリン三曹は、

「さっさと寝ろや、鼻垂れ小僧」

と私を罵倒するに甘んじてさっさと帰っていってしまった。




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