五月十三日 スリザリン三曹と外出 その2
その次の日は週末、つまり休みであった。外出を嫌っていた私は営内に引きこもり、 靴研きや洗濯をして一日を優雅に過ごすつもりであった。だがそんな私は呼び出されたのである。
スリザリン三曹にである。
「なんでお前ら外出せぇへんのや?」
スリザリン三曹に呼び出されホールに行くと私の他に十数名も呼び出され集合していた。 三曹の言葉に皆しばらく沈黙する。下手なことを喋れば命はない、そう誰もが思ったであろう。 私だって怖かった、怖かったが、何も言わないままでも命は無さそうだったのでとりあえずもっともらしい 理由をつけることにした。
「自分は体長を崩して訓練を休んでいたので……」
「自分はまだ訓練で使った物品の整備が終わっていません」
私の発言を皮切りに、やがて幾人かがもごもごと申し訳なさそうに口を開いた。
「……」
スリザリン三曹は鼻息をフン、とやって全員を見渡した。
「ええか、班長も新教のころはあんまり外出せぇへんかった。顔も思い出せん同期だっておる。 震災で奇跡的にここに集まったんやからちゃんと外出して同期と一杯思い出作れ。 整備なんて二の次や、体長悪いんも気合いで何とかなる、多分。外出は班長が申請してやるから外出ろ、ええな?」
「は、はいッ!!」
一同驚きつつも返事をする。私は仰天した。こんなにええ方やったとは。 私は感動のあまり涙を流しそうになったが大衆の手前涙を見せる訳にはいかなかった。 涙腺に決壊しそうな涙溜め込んだ私はトイレに行こうと列を外れた。そんな私に三曹は、
「お前もちゃんと外出せぇよ、鼻垂れ小僧!」
と、再び私を罵倒するのであった。