五月二十日 自衛官神話大系 その3

「森川君、輸送科への入隊おめでとう!」

中隊長らが私の輸送科着隊を祝ってくれた。無論石山班長他同期たちも一緒である。

「ありがとうございます!精一杯頑張ります!!」

「早速だが君に荷物の輸送を頼みたい」

「任せて下さい!」

中隊長に輸送を頼まれた物資は全て段ボール箱で何一つ注記がされていなかった。 荷物をトラックに乗せようとして持ち上げると非常に重く、何か砂のような物が入っているのではないかと思われた。 そう推理した矢先、私はバランスを崩し箱ごと尻餅をついてしまった。 転んだ際に段ボール箱は壊れ中身が見えてしまう。それは白い粉だった。

「まさか……これは……!?」

「森川君、君と言う子は……幸せになれる白い粉、『ハッピーパウダー』を見てしまったか……」

「ちゅ、中隊長!?」

なんと私の背後を取るように立っていたのは秋山中隊長であった。 と言うかハッピーパウダーって何をどう考えてもかの有名なお菓子をコーティングする少し甘くて少ししょっぱい 中学高校の恋愛のような美味しい粉のことではないか。麻薬でも何でもない。 何故にこの人がここにいるのか、さっき別れたばかりではないか?

中隊長は驚く私など気にせず携帯を取り出して誰かに電話をいれた。そして恐ろしいことを口にするのである。

「……あぁ私だ。一人始末を頼みたい」

「中隊長何を言ってるんですか!?」

電話を静かに切ると中隊長はこちらに向き直りいつもの優しい笑みを浮かべる。

「大丈夫、死にはしない。自衛隊を大好きになるための教育に行くだけだ」

目の前が真っ暗になった。

中隊長からの悲しいお知らせ。

「私から非常に残念なお知らせがある……先日高梨二士が特別な教育の為部隊を一時抜けることになった。 だが、高梨二士は自衛隊が大好きである。それを否定する言葉を私は持っていない。 皆も高梨二士を見習い訓練に励むように!」

羊たちは沈黙した。


「う、うぎゃあぁぁッ!!!」

どうやらまた寝てしまっていたらしい。机の上には職種希望調査表があり、第一希望には輸送科と書かれていた。 夢の顛末に恐怖し私は急いで第一希望を儒品科に書き直した。




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