五月二十日 自衛官神話大系 その5
目を開けると私は机の上で潰れている訳でもなく、ただ真っ白な部屋にたたずんでいた。
広さは四畳半程度でテレビ、コンポ、雑誌、電話器等が置かれているのであるが、そのすべてが白く、 まるで保護色のようであった。
私は戯れにテレビを着けてみた。画面は真っ白であったが小さな声が聞こえてきた。 あまりに音量が小さかったので私は顔を近づけてみた。
『私は自衛隊が大好きだ。私は自衛隊が大好きだ。私は自衛隊が大好きだ。私は自衛隊が大好きだ。私は……』
「……」
直ぐ様電源を落とした。画面は相変わらず白いままだったがその言葉はあまりに不吉過ぎた。 テレビから距離をとって今度は携帯電話を開いてみた。すると、驚くことになんとメールが千件も届いていた。 中身を開くと文面には『私は自衛隊が大好きだ』と書かれていた。他のメールを開いてみても内容はどれも同じであった。 携帯を投げつけ、雑誌を手にとる。だが、嫌な予感しかしない。 コンポからも恐らくは先ほどの声が流れてくるであろう。恐怖した私は部屋の隅に身を縮めて体育座りをし、 耳を強く塞いだ。だがそれでもやがて『それ』は聞こえるようになってきた。
『私は自衛隊が大好きだ。私は自衛隊が大好きだ。私は自衛隊が大好きだ。私は自衛隊が大好きだ。 私は自衛隊が大好きだ。私は自衛隊が大好きだ。私は自衛隊が大好きだ……』
この声は私の脳から直接来ている。 そう直感して頭を押さえたがその声はどんどん大きくなり、やがて私の脳内を埋め尽くしていった。
「う、うぎゃあぁぁぁッ!!」
目を覚ました私はびっしょりと脂汗をかき、最早顔面蒼白といって良かった。 にしてもどんどん夢の内容が悲惨になっているのは気のせいだろうか? 何度も書き直ししたせいか用紙はくしゃくしゃになっていた。 私は用紙を破らないよう第一希望を最後の選択肢、会計科に書き直し再び眠りにつくのであった。
リテイク、栄光の未来を我が手に!