六月二十五日 おまけ〜京都幻想滞在記〜 その4

下鴨神社境内にてラムネを飲み、下界に無事戻ることの出来た私は出町商店街で握り飯を買い、 高野川の畔で静かに食した。そして流れる京大生に身を任せて京都大学に流れ着き、 キャンパス内を優雅に歩く学生に魅了され、カップルたちに唾を吐き、カフェで京大生を気取り、 ベンチで昼寝し、少ない青春を桜華した。裏門から進入した私はそのまま南下し、正門から出ることにした。 出ることにしようとしたのだが思わず立ち止まった。

驚け諸君、正門前にはパイプやトタンで加工された屋台のような佇まいに確固たる 決意のもと集まった京大五年の派遣斬り反対集団、通称『クビクビ』の面々が座り込んでいたのである。 自衛官は基本的に政治的活動に参加してはならない。それに付随して社会的集団、 労働者団体とも関わってはならないのである。

そんなの知ったことか。

私は彼らの悲痛な叫びを聞き、彼らは私の無惨な自衛隊生活を耳を痛めながら聞いた。

「まだ若いのに良く頑張りますなぁ」

不当な扱いを受ける者同士打ち解けるのにそう時間は掛からなかった。

「君、是非吉田寮に行くと良いよ」

『吉田寮』私はその聞き覚えのない単語に戸惑った。




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