四月一日 大津駐屯地着隊 その1

「家に帰りたいッ!!」

私は心の中でしきりに叫び続けた。入隊初日、既に私の自衛隊に入らなければ良かったと言う 後悔の念は暴走する暴走特急と化し、手の付けようがなく、スティーブン・セガールが 助けに来てくれるのを待つしか特急を止める方法はないかと思われた。

先ず、私はiPodと将棋盤、それにチェス盤を没収された。まぁ将棋盤とチェス盤は仕方がないとしよう。 一応遊び道具であることに変わりはない。だがiPodはどう考えてもおかしい。 音楽は現在の日本において日々の渇きを潤すオアシス的存在であり、それを取り上げられてしまうと 私に残された音楽媒体は携帯電話のみとなり、さらには私の携帯メーカーが某白犬のお父さんが 活躍する大手さんだったこと、さらに携帯の機種が薄さばかりを追求した木偶の坊だったことにより 私の行き付けであった某有名動画サイトYou Tubeでの動画再生が最大でも二十秒しか出来なかったのである。

そんな訳であるから私の心は枯れる一方であった。さらに言えば没収されたiPodのなかには 私が心血を注いで集めた猥褻画像たちが保管されていたのであるからいくら温厚な私と言えど 怒りを抑えられないのも無理な話ではない筈だ。

「ふざけるなッ!!」

私から奪った没収品を眺め極悪ここに極まれり、といった顔をしている下士官に対して 私は怒りの叫びを面と向かってぶつけた。無論心の中だけで叫んだ訳であるが。

尚、この嫌らしい下士官についてはこれからも物語に度々登場し私や他の隊員らに 嫌味を振り撒いていくことになり、もし魔法か何かの学校に四つの寮があって不良や悪の素質のある者 ばかりが集められる寮があるとすればその下士官は必ずや周囲の期待を裏切ることなくそこへ入るだろうと思われた。


そんな経緯もあり隊員の多くは彼をスリザリン三曹と呼んだ。




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