入部 その2

中学校の入学当初は特に入りたい部活などはなく、野球部かサッカー部にしようと考えていた。 しかし、母さんに「卓球みたいな地味なスポーツがあんたにはお似合いよ」 と言われたのがきっかけで卓球部の体験入部に顔を出してみた。 部員獲得のためか先輩たちは優しく、台を譲ってくれて試しに打たせてくれた。

カツーンカツーン、カツーンカツーン

ラケットと台にボールがぶつかる音がリズムを作り出し、俺はそのリズムに合わせて踊る人形みたいだった。 ピンポン球に卓球台、向こうの相手、それ以外には何も必要ない。

カツーンカツーン、カツーンカツーン

母さんに言われた通り確かに地味な競技だった。しかし、そんなシンプルなものに中学一年生の俺は心を奪われた。 結局体験入部の期間中ずっと卓球部に通い続け、入部を決めた。

その後三年間それなりに努力したつもりだったが、結果から言えば全国大会なんて夢のまた夢、 県大会にすら出ることが出来なかった訳で、これは最早才能が無かったとしか言いようがない。

そういう訳で今回の部活選びにおいて卓球部は予め除外している。

放課後になり、淳の到来に備えて俺は身構えた。 どんな言葉であいつを退けてやろうかと小さな頭をフル回転させて思考する。 しかし淳は来なかった。あいつの席を見てみると鞄はもうなかった。

そうか……

今日から体験入部の期間が終わり、一年生も本格的に部活動に参加することになるのだ。 淳のことだからきっといの一番で卓球部の練習に向かったに違いない。 放課後のせわしない空気の中に取り残された俺は拍子抜けすると同時に、少し淋しさを感じた。




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