入部 その6

「はははっ、さすがは佑樹、やっぱり来てくれると思ったぜぇ!!?」

体育館の入り口で淳に捕まってしまった。俺の前に立ちはだかり、 淳は両手を広げて抱擁を求めてきたが、無論そんなことはしない。 唯に出くわし、色々思うところはあったが一応卓球部も見学してみることにしたのである。

本当に見てみるだけだけどな。

「あ〜、はいはい」

適当に淳をあしらって俺は体育館に足を踏み入れた。せせらぎ高校には大小二つの体育館があり、 大きな体育館が卓球部の練習スペースとなっていた。体育館を割いて半分をバスケ部が男女で使用、 半分になった体育館をさらに女子バレー部と女子卓球部がさらに二分して使っているが、 広さは問題なさそうだ。しかし何故か男子卓球部の姿が見えない。

「男子は何処にいるんだ?」

「あぁ、上だよ、上」

淳は何処か偉そうに言った。

中学時代は見受けることが出来なかったが、 多少広い体育館にはホール内での試合を見るためのギャラリーが存在する。 せせらぎ高校の体育館もその仕様だったのであるが、なんともはや、 残念なことに男子卓球部の練習場所はそのギャラリーであった。

「……ひでぇな」

思わず顔を顰めずにはいられなかった。しかし、淳は違った。

「そうか? 秘密基地みてーでカッコイイじゃん!?」

「お前ってかなりポジティブな奴だよな」

「まぁな」

バスケ部バレー部の掛け声が館内にこだまする中、 俺たちは男子卓球部の練習場所であるギャラリーに上って行った。 声と声の間にピンポン球が台を鳴らす音が耳に入ってくるのが何処か心地良く感じられ。 女子卓球部の練習を覗くと、唯の姿が確認出来た。必死に打ち込み練習をしていて、 こちらには気付かないようだ。




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