変態紳士同盟

荘太と文が丸酒屋に入った頃、シャレ乙男もアーケード街に足を運んでいた。 もっとも、彼に関しては先ず硝子細工店をしらみ潰しに見て回っているようである。 そんな中、男の足はあるケーキ屋の前で止まった。それはアーケードの外れにある 『キル・フェ・ボン』というお洒落な趣味の良い店であるが、 男の目はショーウィンドウのケーキではなく入口に置かれた大きな看板で止まっている。

『変態紳士同盟入店お断り!!』

看板にはかのような内容がでかでかと印刷されていた。が、『変態紳士同盟』とは何ぞや、と思う方も多かろう。 それは『昭和最後の七日間戦争』と呼ばれる不毛な変態二人組の活動を最近になって引き継いだという、 仙台の街で意味不明な活動を繰り返している極めて不毛な集団であった。 特に周囲に迷惑をかけることもなく、また認知されることもなく、 彼らは妄想と現実の入り交じった日常を謳歌していた訳であるが、 この同盟を人の世に知らしめた事件が起こったのは去年の暮れである。

変態紳士同盟の配下組織、『アンチクリスマスの会・サタンクロス』 のメンバーがキル・フェ・ボンにて販売された限定クリスマスケーキ 『クリスマスをカップルで過ごしたい人の為のケーキ』通称・恋人ケーキ限定五〇個すべてを購入し、 多くの恋仲の男女を無差別に苦しめるという何とも不毛な事件を起こしたのである。 これによりサタンクロスを含め、変態紳士同盟の面々は一切合切アーケード街から追放された訳である。 ちなみに荘太と文の先生もこの事件には無関係であるが同盟のメンバーであり、幹部格の人物であるとされていた。

「仙台も随分可笑しな街になってるな……」

男は苦笑いして自分の頭が暑さでやられているのではないかと考えた。 が、どうやらそうでもないらしく、とりあえず自販機で冷たい缶珈琲を買ってどこかで休憩することにしたのであった。




もくじへ移動/ 次のページへ

TOPに戻る