仙台の中心で無罪を叫ぶ

さてさて、誤った情報を誤って手に入れてしまったシャレ乙男である。 彼は足早にアーケード街を通り抜け、駅裏のスガワラ商店にいち早く到達すべく邁進しようとしていたのであるが、 ここで男は災難に出会すことになる。

クリスロード商店街の末端、大型デパート・ダイエーの前にて、 水色と白のワンピースを着た『いかにも頭の悪そうな女の子』がびいびいと泣き喚いていた。 往来は一同迷惑そうに目を背け、少女の半径二〇メートル以内では黙りを決め込んでいたようで、 シャレ乙男も同様にこのままやり過ごしたいと考えていた。が半径二〇メートルからあと数歩で脱出、 といった刹那である。彼の内なる天使は「この泣き叫ぶ哀れでいかにも頭の悪そうな少女を助けよ!!」 と選挙さながらに街頭演説を繰り広げ、それが原因で急性の胃痛が男を襲い、 ほぼ強制的に回れ右をさせられ、少女の元に舞い戻らざる負えなくなった。

「―――君、どうしたんだい?」

男は膝をついて少女と同じ目線に立つ。もしかしたら胃痛のせいでそのまま立っていられなくなっただけかもしれない。

「グズ……悪いお兄さんに、アイスクリームを……取られた」

なんと不敏な少女であろうか!?かのようないたいけな少女からアイスクリームを奪うなどとは言語道断、 犯人には必ずや天誅が下るであろう。男はそう考え、何かを決心したように、

「よし!おじさんがアイスクリームを買ってあげよう!」

と、少女の手をとった、まさにその瞬間である。 あたかもそれを待ち伏せていたかのようにいかにも正義感に溢れまくっていそうでがたいの良すぎる体型を持て余した 『現代版武蔵坊弁慶』のような警察官が到来し、男に有無を言わさず職務質問を立て続けに喰らわしてきた。

「君、名前は?住所は?電話番号は?身分証ある?彼女はいる?身長は何センチ?一緒に交番まで来てもらえるね?」

シャレ乙男の脳裏を過ったのは本日の『OHバンデス』にて自分が晴れ晴れテレビデビューを果たす光景であった。

無論悪い意味でである。


「おぉ、ジーザスッ!!」

彼は祈りを込めて十字を切った。ちなみに彼はキリスト教徒ではないので恐らくジーザスは助けてくれないかと思われた。




もくじへ移動/ 次のページへ

TOPに戻る