ボーイ・ミーツ・ガール

五橋は仙台駅から少し南下した所にある小さな町で中央には五橋公園と呼ばれる微妙に広い公園がポツンとある。 その公園のブランコにポツンと座り込み、他の遊具で遊ぶ子供たちを眺めているのが少年・常磐荘太であった。

そこへ春風の如く颯爽と登場したのは琴羽野文である。 短い髪を後ろで結わえて細い輪郭をさらに強調しているのは何時なんどき 『OHバンデス』の取材が来ても映り栄えが良いように、と言うのが専らの噂であった。 荘太は俯いたまま口を開く。

「―――文、いつも僕のピンチを事前に知ってるような気がするんだけど僕の気のせいかな?」

文は、「知らなかったの?」といった感じで呆れたように溜め息を漏らした。

「いつも先生が教えてくれるのよ、 荘太が心配だから助けてあげてくれって……今回だって先生があんたを心配して連絡してくれたんだから」

「やっぱり先生は凄いや……」

なぜ少年・壮太はあの昼行燈のような先生を尊敬するのかは甚だ不明であるだろうが、割愛するものは割愛する。


「さ、行くわよ」

「うん!」

文の声で荘太は見えない手で引っ張られたかのように立ち上がり再び勢い良く地面を蹴るのであった。

「―――で、どこに行くの?」

「お母さん、今日どこにお出かけするの?」 そう言いたげな壮太の表情はせっかくの仕切り直しを台無しにしてしまった。

「先ずは―――分町ね」

仕事のあとの一杯、と言った感じで金曜日のサラリーマンのような発言をする文。 『国分町』、通称分町とは、仙台で最も広大な飲み屋街のことである。 で、あるからして、酒に関する情報が軒並み募っていて至極当然である。 ちなみに、この国分町は仙台のアーケード街にも隣接しており、更なる情報収集が可能であると考えられた。 ちなみにこの情報は先生が文に託したものであったが、知っているなら自分で行って貰いたい、 というのが文の本音でもある。


何はともあれ二人は国分町を目指すのであった。




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