ギャング・オブ・国分町

『ハピナ名掛丁』、『クリスロード商店街』、『マーブルロードおおまち』、 これらが仙台の街を横断する大きなアーケード街であり、縦に伸びる『一番町商店街』 も加えて連日多くの人で賑わう仙台の主要経済区域を形成していた。 このアーケード街に隣接する飲み屋街『国分町』は仙台の無法地帯と言っても過言ではなく、 連日連夜ヤクザ同士の銃撃戦が繰り広げられ、路傍には見るも無惨な死体が転がっている…… 訳では無いが飲み屋街ということもあって強面且つ恐ろしいお兄さんや強面たれども心優しいお兄さんたちが沢山いる。 そんな飲み屋街の北の外れに『丸酒屋』と呼ばれる、営業しているのかしていないのか、 二、三年ほど前に目撃されたのを最後に全く姿を見せなくなった店主の老婆は生きているのかいないのか、 不明な点の多い店がある。荘太と文は先ずその丸酒屋に足を運んだのであった。

「―――ここ、本当にやってるのかな?」

荘太が心配するのも無理からぬ話である。 店の扉は半開きになってはいるものの中は真っ暗で商品はおろか希望すら見出だすことが出来ず、 通行人に聞いてみれば十人中九人は閉まっていると言い、 残りの一人は勇んで中に入ったは良いがそれっきり出てくることはなく、 中で行き倒れたか何者かの手によって闇に葬られたのではないかと思われた。

「三日前に先生ここで『ジョニ黒(ジョニー・ウォーカー黒ラベル)』買っているわ。営業はしてるんじゃない?」

文はさらりと言う。情報集めにこの丸酒屋を選んだのも先生行きつけの店だからである。

「そうかぁ……でもなんで文がそんなこと知ってるの?」

「……どーでも良いでしょそんなこと」

腫れ物に触られたように文はプンスカ怒り、ズンズンと店内に入って行ってしまった。

「―――あ、待って!置いていかないで!」

通行人の証言によれば、 そこには良い歳をした少年が母親を求めるが如く同年代の女の袖にしがみついていたそうである。




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